心のよりどころは、母を恨むこと
「親子間のトラブルは、100%親が悪いのよ」
義母はそう言い切った。
夫は次男だが、神経質で頑固な長男は3兄弟の中でも特に問題が多いようだ。中学生・高校生の時に周りと馴染めずいじめにあったり、社会に出ても職場で浮いてしまって仲間はずれにされ、人間関係が原因でたびたび転職を繰り返している。
気難しい長男は、家族の間でもどう接していいかわからない存在になって腫物扱いされている。
荒れていた時期に母親に暴言を吐いたこともあるらしい。
「親のせいで俺の人生はめちゃくちゃだ!」
その時の息子の言葉に義母は大変ショックを受けた。
「もっと私が母親としてもっとちゃんとフォローしていたら、長男の人生はちがっていたのに。長男はかわいそうだ、私が未熟で、ちゃんとしなかったせいで・・」
これが義母の口癖になってしまった。
なぜか私に会うと、いつも目を赤くして自身の育児懺悔をする。次男の嫁である私に長男の懺悔をされても、正直困るのだが・・
「親子間のトラブルは、親が100%悪いからね」
この言葉、家族の話になった時にいつも決まって義母が言う。離婚家庭にも関わらずしっかりまともに育った私を褒めるニュアンスで言ったように思う。
子供はなにも悪くない
すべて親のせい
この「100%」という語気の強さが気になる。
優しいようでいて・・圧を感じる・・
話は少し変わるが、義母は実母である祖母と仲が悪い。
とても自分勝手な困った祖母だったようで、さんざん振り回されたそうだ。葬式でも涙は出ないかもしれない、とこれまた口癖で義母がよく言っている。
ここで先ほどの義母の言葉を借りれば、義母は祖母を100%恨んでいるということになる。だって、親子間のトラブルは親が全面的に悪いんでしょ?
親が100%悪いという言葉・・義母はたぶん、私を見て言っていない。その後ろに見える昔の非力な自分に向けて言った言葉だったのだ。
親に恵まれなかった自分を私に投影してあわれんでいる。私が自分と同じ「かわいそうな子」であって欲しい、被害者友の会の一員であって欲しい、無自覚なところの本心はそんなとこだろう。
「無力で非力な子供」を「かわいそう」とあわれむ自分の母性に酔っているのだ。
私は「親がめちゃくちゃでも、子供は幸せになれる」と義母に言ったことがあるが、義母にとってはそんなふうにたくましく生きる子供像など必要ないのだ。
母親を恨むことを心のよりどころとしているのは他でもない義母自身だ。